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ゲーム界の2大シリーズである「Halo」と「Destiny」の制作を手がけたスタジオBungie(バンジー)がソニーに買収される。これは、次世代ゲーム(とメタバース、それが何であれ)が盛り上がりを見せる中で繰り広げられている統合と縄張り争いの1つだ。

このニュースは米国時間1月31日朝に両社から発表され(業界関係者のJason Schreier[ジェイソン・シュライアー]氏がいち早く報じている)、買収額は36億ドル(約4140億円)だ。Microsoft(マイクロソフト)が最近行った600億ドル(約6兆9035億円)でのActivision Blizzard(アクティビジョン・ブリザード)買収に比べればわずかな額かもしれないが、Bungieはゲーム界における伝説に勝るとも劣らない存在だ。

忘れられた旧作であるFPSゲーム「Pathways Into Darkness」や影響力のある「Marathon」でMacに特化したスタジオとして90年にスタートしたBungieは「Halo」でゲーム界の勢力図を変えようとした。Apple(アップル)がゲームに真剣に取り組むのに役立つことを目的としており、Steve Jobs(スティーブ・ジョブズ)氏もこの波に乗った。

しかし、MicrosoftがBungieを買収し「Halo」を新しいXboxコンソールの独占タイトルにすると発表した。これにApple(アップル)はかなり失望し、App Storeで成功を収めるまで、ゲームを完全にあきらめていたようだ。

HaloはXboxの主力シリーズの1つに成長したが、いくつかの続編の後、MicrosoftがHaloブランドを保持する一方で、BungieはオリジナルIPを追求するために独立企業としてスピンアウトした。2013年、独立したBungieが公開した「Destiny」は大ヒットとなり、2017年にはその続編がデビューし、現在も展開されている。

Bungieは2019年から長年のパブリッシャーであるActivision(アクティビジョン)との関係を継続し、さらに自社を自由にすることで……買収されることになった。いずれにせよ、このような事態は避けられなかったと思われ、自分の好きなようにやって良かったのかもしれない。

今回の買収は、ライバルのコンソールゲーム会社が次の戦いに向けて準備を進めている中で、ソニーによる明らかな領地収奪だ。ゲーム・アズ・ア・サービス(GaaS)、いわゆるライブサービスゲームは、業界にとって儲けの多い新モデルの1つとなっており「Destiny 2」はその最も成功した例の1つだ。ゲームを販売し、コンテンツの定期的な「シーズン」、新たな美的アップデート、その他のアイテムでさらに収益をあげるGaaSモデルは、MMO(多人数のプレイヤーが同時にアクセスできるオンラインゲーム)に倣っている。

おそらく「Destiny 2」の人気が下火になり「Destiny 3」の発売も間近に迫っていることから、今回の買収は非常にタイムリーなものだ。最大のGaaSシリーズの 1 つを所有し、関連するマルチメディアにも投資する(Netflix番組はいまや避けられないようだ)ことで、ソニーは次世代ゲームの収益に向けて態勢を整えている。「Destiny 3」が前作同様クロスプラットフォームになる可能性は高いと思われるが、MicrosoftのGame Passに対抗して大幅リニューアルされると噂されているソニーの定額制サービス加入者向けの特典を阻止するものは何もない。

「今日、Bungieは世界的なマルチメディアエンターテインメント企業になるための旅を開始します」とCEOのPete Parsons(ピート・パーソンズ)氏は買収発表のブログ投稿に述べている。「我々の運命は我々が握っています。これからも独自にゲームを発表し、クリエイティブな開発を続けていきます。SIE(ソニー・インタラクティブエンターテインメント)の支援を受け、我々の野心的なビジョンを支えるために、スタジオ全体で人材の採用を加速させることが即座に目にする変化となるでしょう」。

同社は、期待される続編だけでなく、新規IPの開発にも取り組んでいると報じられている。もしかしたら、独立と新たなリソースによって、カルトヒットとなった「Marathon」が復活するかもしれない。同社に「Marathon」を覚えている人が残っていればの話だが。

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(文:Devin Coldewey、翻訳:Nariko Mizoguchi