2021年暦年新車販売台数において9万5049台を販売し、自販連が公表する乗用車ブランド通称名別順位で4位に入ったアルファード。前年の5位からランクアップし、2年連続でトップ5に入る人気は、驚異的である。
ラージサーズミニバンであり、モデル末期といわれる状況でありながらも、ここまで売れるには、それなりの理由があるはずだ。またその裏には、表面化していないウィークポイントがあるかもしれない。
トヨタの販売事情に明るい筆者が、アルファードの強さと隠れた盲点を解説していく。
文/佐々木 亘
写真/トヨタ、ベストカー編集部、ベストカーweb編集部
■コロナが加速させる「いつかはアルファード」の時代
直近の2年間でアルファードの需要は大きく高まった。2020年初頭から現在まで、この間に世の中で何があったのかを考えると、「コロナとの戦い」に尽きるだろう。様々な事業が影響を受け、モノが売りづらくなったこの時期に、アルファードは大きく販売実績を伸ばしていった。
旅行や服飾品などへ使うお金が少なくなり、こうしたお金は日常的に使うものや食べるものなどに使われるようになる。コロナ禍では、常態的に使用するものを「ワンランク上」に変える動きが活発化した。
軽自動車からコンパクトハッチ、セダンやワゴン、SUVやミニバンと様々なカテゴリーのクルマを利用していたユーザーが、上級志向に動く中で、幅広く支持を集めたのがアルファードなのである。
十分な室内高でゆとりのある車内はハイトワゴンやミニバンから乗り換えても十分に満足できる。もちろん多人数乗車から多くの荷物をのせることまで、幅広く使えるユーティリティカーだ。リアサスペンションをダブルウィッシュボーン式に変更し、構造用接着剤などを多分に用いた高剛性のボディは、高級セダンと同様の乗り味を実現している。
クルマに求められる十分な性能や機能をオールジャンルで満たしたアルファードは、ミニバンカテゴリーだけでなく、オールジャンルの上位に位置する存在となった。
販売現場で、アルファードへ乗り換えたユーザーが、これまで乗っていた車種を聞くと、タントやN-BOXにはじまり、アクアやシエンタ、ハリアーからクラウンまでと非常に幅広い。営業マンも、ユーザーを選ばないアルファードは、非常に売りやすいクルマの一つだと語る。
クルマとしての性能や機能、そして質感の高さはもちろんだが、「ワンランク上」を考えた際の、大きな受け皿になったことが、アルファードの躍進を支えているのだろう。少し昔の言葉を借りるとすれば、「いつかはクラウン」ではなく、「いつかはアルファード」の時代になったということだ。
■世界唯一の圧倒的存在に盲点はあるか
アルファードのライバルになるクルマは、世界を探してもいないと思う。同車格のライバル車は軒並み高価格であるし、同価格でくらべればアルファードの質感は圧倒的に高い。
販売の面でも、トヨタの販売網は国内随一だ。資本違いの販社が、同一地域に複数あることから、アルファードのライバルは、アルファード自身ともいえる。
売れない理由を探す方が難しいアルファードだが、現在の人気が未来永劫続くかというと、そうではないと思う。
今のアルファード人気は、高価格で取引される中古車市場が作り出したといっていい。中古車市場でもアルファード人気は高く、この傾向は非常に長い間続いている。この安定した中古車人気が、新車販売時の高い残価率を生み出したのだ。
高残価は、不思議な現象を生み出した。トヨタミニバンの中でノアとアルファードの購入検討をした際、売れ筋グレードで比較すると総支払額が100万円以上も高いアルファードの残価設定ローンにおける月々の支払額と、ノアの月々の支払額がほとんど変わらなくなる。
月々のローン負担が大差ない、つまり毎月同じ金額を支払って、ノアとアルファードのどっちに乗るかと問われれば、大多数がアルファードと答えるのではないだろうか。実際の商談現場では、こうした問答が行われ、アルファードが飛ぶように売れていくのだ。
しかし、残価設定ローンで購入したユーザーが、ローン満了時期に一斉にアルファードを手放し、中古車市場へ3~5年落ちのアルファードが溢れることがあれば、中古車取引価格が下がり、同時に高い残価率も落ちていく。今のような、高残価を売りにした販売手法が取れなくなる可能性は高くなるのだ。
今の売れ行きは好調だが、この状況は数年後まで保証されたものではない。人気の裏に隠れて、常に諸刃の剣を携えたアルファードの姿が、筆者には見えている。
■売れ筋グレードから見るアルファード購入ガイド
今、アルファードが選ばれるポイントは何かと問われれば、先にも挙げたリセールバリューの高さにあると思う。それを踏まえて、2022年1月現在での、アルファードの購入に際する注意点を上げていこう。
まずは人気のグレード・エンジン体系を選ぶことだ。アルファードで人気の上位3グレードは、全てガソリンモデルが占めている。またS Cパッケージと特別仕様車S TYPE GOLDの人気が圧倒的だ。
残価設定ローンを利用し、数年後の返却(売却)を前提とするなら、エントリーグレードのXは間違っても選ばないほうが良い。SCやGF、エグゼクティブラウンジなどの上級グレードは、返却時の値下がり幅が大きくなるので、こちらも得策とは言い難くなる。
したがって人気のS CパッケージかS TYPE GOLDに、余裕があれば人気のメーカーオプション(ツインムーンルーフ・リアエンターテインメントシステム)を付けておけば十分だ。高すぎるリセールバリューを、さらに高める買い方が、アルファードには非常に有効な方法である。
クルマの作りの良さはもちろん、社会情勢やリセール市場など、様々な要因がアルファードの味方に働き、現在の高い人気を誇っている。
こうした人気が一過性で終わるとは考えにくいが、バブルがはじけるような脆さもあることを、メーカー・販売店・ユーザーが知っておくべきだろう。
今年の末にはモデルチェンジも噂されているアルファード。2022年の動きはどうなるのか、今後も注目の一台である。
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投稿 いつかはアルファード! 驚異の2021年新車販売台数4位!! 元トヨタ営業マンが明かす売れる理由と弱点 は 自動車情報誌「ベストカー」 に最初に表示されました。