雪国では、どのドライバーも氷雪路を普通に走っている。毎日の通勤や仕事に買い物にと、クルマを使わなければ生活できない環境におかれていて、降雪だからと外出を控えるわけにはいかないものだ。
なかには運転に不向きな人もいるのだろうが、毎冬の日常で鍛えられていることから、押し並べて雪道を走るのは慣れていて上手だ。
特にパウダースノーな北海道の厳寒地域では、軽自動車やコンパクトカーを運転するオバチャンドライバーが結構な勢い(雪道と思ってないようなスピード)で、ガンガン走っていることも珍しくない。
それでも日本海側の近年の大雪ぶりは、雪国のドライバーにとっても想定外の状態が続出されているのだろう。プロドライバーが立ち往生して、国道や高速道路が通行止めになってしまうことも珍しくなくなっている。
ましてや関東以西在住者にとっては、氷雪路のドライビングは結構なハードルであるハズだ。そこで氷雪路を安全に走る方法について、解説していきたい。
文/高根英幸、写真/ベストカー編集部、AdobeStock
■慎重に運転しつつも、滑っても緊張しないことが大事
まずは運転するための準備やクルマの使用についてだ。スタッドレスタイヤを履き、金属チェーンも携行し、スピードは出来る限り落として(周囲に迷惑が掛からない程度で)、急の付く操作は避けて慎重な運転を心がけることが、基本的な氷雪路の走り方だ。
アイスバーンに特化したスタッドレスでは新雪には弱いこともあるし、アイスバーンの性能もスパイクタイヤほどではない。
路面の状況に応じて、早めにタイヤチェーンを巻くことが大事だ。どの場所でも停めて装着していい訳ではないので、他車に迷惑がかからない(自分にとっても危険だ)場所を選ぶ必要があるので、まだスタッドレスだけでイケると思っても、装着できる場所を見つけたら迷わずに停めてチェーンを装着することだ。
前述のように北海道など厳寒の地では、軽自動車やコンパクトカーが雪道をものともせず、軽快に走っている。
これはスタッドレスタイヤの性能が向上したり、軽量コンパクトな4WD車という条件の良さもあるが、毎日走っている道路で前日やその日の天候によりその日の路面状況が想像できる、あるいは毎年のことなので多少の変動はあってもクルマやタイヤの性能でカバーできる範囲の変動なのである。
それは毎年のことなので、豊富な経験値から言わば「慣れ」によって気持ちに余裕が生まれる。実は通常の範囲であれば、この「慣れ」というのは非常に有効なものとなる。というのも、氷雪路での運転は注意深く走行する必要はあるが「リラックスした状態で走る」というのも大事なことだからだ。
なぜなら氷雪路でのクルマは自分の想像とは違った動きをすることがある。ツルッと滑って大きく揺れたり、急にクルマの向きが変わったりすると慌てたり緊張してしまうドライバーも少なくないが、これがハプニングを起こす原因になる。
滑っても緊張しないためには、低μ路などでの練習が必要だ。緊張して身体がガチガチになって、ステアリングやペダルの操作がスムーズでなくなると、それがスピンを誘発することになる。
クルマの姿勢をコントロールするための操作も、緊張してしまうと思考停止に陥ってそのまま何もできずに雪の壁に突っ込んでしまったり、側溝に脱輪するなんて羽目に遭う。
高齢ドライバーに多いペダル踏み間違い事故でも言えることだが、クルマが自分の予想外の動きをすることでパニックになってしまうのが一番危ない。
■4WDといえども過信するべからず、下りの坂道ではブレーキ踏んでも効かない場合も
パワーユニットの制御モードにスノーモードが用意されているクルマは、それを利用すると操作が楽だ。2速で緩やかに発進して早めにシフトアップしていく制御となり、スロットルバルブの反応も穏やかになるのでクルマの挙動が安定する。
最近の乗用4WDはクルマの挙動を安定させてくれる。雪国ではほとんど必須といっていいくらい、軽自動車やコンパクトカーでも4WD比率が非常に高い。
しかし4WDが優れるのは駆動力だけで、ブレーキの性能は2WDと変わらないことを忘れないでほしい。
特に車重が重めなアッパーミドルクラス以上のクルマやSUVは、走破性に優れる余りついつい普通の感覚で走行してしまい、下り坂のアイスバーンなどで怖い思いをすることも珍しくない。安定しているのでついつい普通に走ってしまいがちになるが、オーバースピードには気を付けることだ。
またシフトダウンしてエンジンブレーキを積極的に使うのは4WD車だけだ。FF車で強くエンジンブレーキを効かせようとすると、リアがブレークしてスピンモードに陥ることがある。Dレンジでアクセルを戻すだけなら、エンジンブレーキはほとんど効かないから姿勢は崩れにくいから安全だ。
■路面状況に応じてペースやルートを考える
新雪が降り積もった道路は、スタッドレスであれば結構グリップする。問題はクルマが踏み固めた圧雪や、翌日以降の気温が上下動したことで凍ってしまった路面だ。
基本は轍を利用して走ることだ。轍に逆らって走ったり、フラフラと左右に落ち着かない走り方ではクルマを不安定にさせるだけだ。
ただし圧雪路では凍った塊により路面が凸凹している場合もある。これが厄介な存在で、クルマがコントロールを失うきっかけに成り得るのだ。こうした場所を安全に走り抜けるには、なるべく直線的に走破することだ。
カーブは道なりに走るのが基本だが、轍でも大きなギャップ(氷の塊や穴など)があれば、それを避けるように走るか、避けられなければ少し舵角を戻してクルマの曲がる力を弱めてやれると安全だ。
クルマに旋回モーメントが発生している状態でギャップによって前後左右のタイヤに荷重変化が起こると、スピンモードに陥るきっかけになるからだ。
急の付く動作を避けるというのは、クルマに余計な挙動を作るきっかけを与えないことが目的なのだから、路面からの入力でも同じことが言えるのだ。
そういった意味では、対向車の進路が少し膨らんだだけで衝突の可能性が高まるから、センターライン寄りを走行するのは危険だ。いつもより意識して路肩よりを走ろう。
交差点を曲がった途端に路面の状況が変わるのも、よくあることだ。方角が変わることで日当たりが変化して、それまでドライ路面だったのに、いきなりアイスバーンが出現することもある。
カーブで凍っている路面に遭遇したり、交差点などで突然路面状況が変わることもある。曲がらないからと、どんどんステアリングを切り足すのはNGで、クルマは余計に曲がらなくなってしまう。
アクセルペダルを踏み込む量を少し減らし、フロントタイヤのグリップが回復するのを待つことだ。大抵の場合は1秒くらい(体感上は長く感じるが)でグリップを取り戻し、向きを変え始める。
常に先の道路状況を想像して、危険性の少ないルートを選んで走ることが大事だ。土地勘のない場所であれば、さらに用心して走る必要がある。
スタッドレスタイヤを履いていても、路面状況によってグリップ力は変化する。そのため時々ブレーキでタイヤのグリップを探るようにすることが大事だ。
これは後続車と十分に距離があることを確認して、ブレーキの利き具合を時々チェックするのだ。
どれくらいの踏み具合で制動力が限界となり、ABSが作動するか分かればどれだけ速度を控えめにして、早めにしかも丁寧なブレーキ操作をする必要があるか分かるだろう。これによりブレーキが効かず滑った時に緊張することも減り、落ち着いて運転できるようになる。
■視界の確保と、駐車する場所にも注意
降雪時はむしろ視界以外は走りやすい。新雪を踏み固めることでグリップ力を発揮するからだ。むしろ降雪時は視界の確保が問題となる。
雪用ワイパーを使うのと、ウインドウウォッシャー液は不凍タイプを原液で入れてウインドウの凍り付きを防ぐこと。エアコンやヒーターの効きが悪いクルマはキチンと整備しておくことだ。
気温が下がると急にウインドウが曇ったり、窓に雪が残り始める。そんな周囲がよく見えない状態で走行を続けるのは、非常に危険だ。
もし吹雪いて視界が真っ白のホワイトアウトになってしまったら、地元のドライバーでも脱輪や路線逸脱をしてしまう可能性が高まる。
どこか安全な場所に駐車して待機できるなら、しばらく留まって様子を見る(ラジオやネットで気象情報を得る)ことも考えよう。目的地や到着時間にこだわり過ぎず、より安全なルートに変更することも選択肢に入れるべきだ。
走っている時だけでなく、駐車する場所も気を付ける必要がある。建物の影になるような場所は積雪が避けられると思うかもしれないが、吹き溜まりになるような場所である可能性もあるので気を付けよう。
中途半端に屋根がある場所は、上から雪が落ちてきたり、溶けた雪が流れ込んできてクルマが凍り付いてしまうこともある。
また高齢ドライバーによる運転操作ミスと思える事故もこの冬、雪国でも起こっている。自分がキチンと運転していれば、事故には遭わないという訳ではないだけに、常に周囲の交通にも気を配って用心している必要があることも忘れないでほしい。
【画像ギャラリー】北国のドライバーに学べ!! 雪道・凍結路の安全な走り方&してはいけない走り方(8枚)画像ギャラリー投稿 4WDに限らない「雪道の危ない走り方と予防方法」 は 自動車情報誌「ベストカー」 に最初に表示されました。