アメリカのドナルド・トランプ前大統領が新たに始めたSNS事業会社が、SPAC(特別買収目的会社)との合併・上場による資金調達で好調のようだ。ロイターの25日付報道によると、ここ最近、上場したSPACで特に高い株価となっている資源関連のMPマテリアルズの倍近い勢いを見せている。
トランプ氏は大統領任期終盤の昨年1月、ワシントンの議会選挙事件を機に、ツイッターやフェイスブック、ユーチューブなどSNSサービス各社からアカウントを強制的に閉鎖された。大統領就任時はツイッターでの投稿が世界各地のトップニュースになるなど、同氏の影響力の拡大装置として機能していたが、主要SNSから事実上追放されたことは痛手になったはずだった。
しかし、トランプ氏は24年の大統領選出馬も視野に入れているようで、実業家らしくネットでの「足場」を自ら築く動きに打って出た。昨年10月、自ら会長を務めるメディア会社が、新しいSNSサービス「トゥルース・ソーシャル」を運営する計画を発表。ナスダックに上場している「デジタル・ワールド・アクイジション」というSPACと8億7500万ドル(約996億円)で契約合併する形で、資金調達に乗り出すことが明らかになると、株価が急騰。売買が一時停止されるなどの盛り上がりを見せた。
ただ、物議を醸すのも“トランプ流”だ。昨年12月には、証券取引委員会(SEC)がトランプ氏の会社とデジタル・ワールド・アクイジションとの合併計画について調査が入り、投資家の身元などの情報提供を求められたことが発覚していた。
そして年が明け、トランプ氏のSNS追放劇から1年、そしてSNS事業の計画発表から3か月が経った1月後半を迎えたが、デジタル・ワールド・アクイジションの株価は絶好調をキープしている。ロイターが、SPACリサーチのデータをもとに報じた株価パフォーマンスでは、SPAC株価10傑のうち、3位に入った電気自動車(EV)のルーシッド・グループ(41.37ドル)、2位のMPマテリアルズ(45.14ドル)を抑え、デジタル・ワールド・アクイジションは79.71ドルと際立っている。
新しいSNSサービスは2月にローンチ予定。まだ始まる前にも関わらず異例の高値となったのは、トランプ氏の根強い支持を背景に、投資家らの強い期待が集まったためだが、民主党側は議会で、このSPACに対するSECの調査を進めるよう要求。今後の展開によっては株価を押し下げる潜在的リスクがあることも指摘されている。